ポッポ屋日記

日記的なブログにしたいです

DEATH STRANDING DC版感想記事 たった1人で世界を繋いだ男の配送記録

 

(この記事にはデスストランディングのネタバレが含まれます)

 

去年の僕はゲーム漬けの1年だった。

春にPS5を買ってからのプレイステーションでの年間プレイ時間数は800時間を超えた。僕はRPGが好きなので1つのゲームに対してプレイする時間が長くなりやすく、一度これをやろうと決めてゲームを始めたら最後、ゲーム内のやり込み要素を全部クリアするまで他のゲームには一切手を付けない。

そのせいで幅広いジャンルや数ある名作に触れる機会が減ってしまうのは残念なところである。だがその分濃密に掛けたプレイ時間の長さと期間がプレイした後の思い出として克明に残りやすくなっており、ゲーマーとして充分ゲームを楽しむ事が出来ていると感じられる。

去年の8月から始めて3ヶ月間もの期間を掛けて長らくプレイしたペルソナ5 THE ROYALをクリアしたあと僕はニーアオートマタを始めた。来るFFの新作が出るまでの間、名作ゲームに触れられる時は触れてやりたいと思って始めたオートマタ、まだまだ序盤も序盤でさぁこれからだぞという時に僕はとあるゲームの存在が目に入った。

それがデスストランディングである

 

f:id:Gameslifeisff:20220201113821j:image

DEATH STRANDINGとの出会い

デスストランディング(以下デススト)とはかの有名な小島秀夫監督がコナミを退社後に独立して建てた新たな開発会社で作られ世に出た処女作であり、当時はSIEからのサポートもあって作られた為、発売プラットフォームはPS4で独占。PS4専用ゲームとして発売されたそのゲームは世界中で大きく話題になった。

コナミ退社後の小島監督が作った新作という事もそうだが、これまで小島監督が作り上げてきたメタルギアシリーズとはまた違う新たな世界観での物語や、これまでのゲームにはなかった独特のゲーム内容によって深みにハマる人が続出、クオリティの高い作品を生み出した事で世界中から高い評価を得て、その年のThe Game Awards 2019では数々の賞を受賞した名作となった。

そんなデスストは2021年にディレクターズ・カット版と称したPS5版が発売された。PS4版でも十分な名作であったデスストがPS5にハードを移したことで体験出来る快適さや新たな要素を追加するなどデスストの更なる進化を感じさせるものとなっている。

僕はそんなデスストの存在を目にした時、急激にその作品の存在が気になるようになった。小島監督の新作だからという事は関係なしに、これまでやった事のない配達ゲームというカテゴリーやその世界観が気になったというのもあり、無性にやりたくなっていた。しかしフォロワーさんからは「凄く面白いけど万人受けはしないから強く勧めたりはしない」と一応の警告は受けていた。

しかしその言葉を聞いて僕はますますこのデスストという作品の存在が気になるようになっていた。あの時どうしてこんなにもデスストという存在に僕の心が引き込まれたのか、今となってはよく分からない。しかしやりたくなっていたことは確かだった。だから僕はそのソフトを買う事に躊躇はなかった。

そして僕はデスストを購入、少しの間積んでいた後始めることとなった。

 

PS5の性能を生かした基本的な魅力

デスストのDC版はPS5で発売された事で大きく進化した。具体的にはPS5の基本的な魅力となる4Kグラフィックや高フレームレートの安定化はもちろんの事、PS5独自の爆速ロードもデスストでしっかりとその真価を発揮する事となった。

僕がゲームを最初に起動してめちゃくちゃ驚いたのはその圧倒的なグラフィックの綺麗さ、そして登場人物の実写レベルのモデリングの良さである。

f:id:Gameslifeisff:20220201123226j:image
f:id:Gameslifeisff:20220201123244j:image
f:id:Gameslifeisff:20220201123224j:image
f:id:Gameslifeisff:20220201123230j:image
f:id:Gameslifeisff:20220201123247j:image
f:id:Gameslifeisff:20220201123234j:image
f:id:Gameslifeisff:20220201123237j:image
f:id:Gameslifeisff:20220201123251j:imageこうして画像として見ただけでもほぼ実写...というか実写そのものである。

このゲームは登場する主要人物の殆どが実在する世界的ハリウッドスターからモデルデータを取り、それを元にモデリングをしているのである意味では納得の仕上がりだとは思うのだが、それでも黙って見ていると実写と酷似してしまうのでデスストを知らない人が何も聞かされずにムービーを見た場合、映画を見ていると思わず錯覚してしまうだろう。それぐらいのレベルでデスストのモデリングのレベルは桁違いに高い。

FF7リメイクもまた等身が高くなったリアル系グラフィックになった事で髪1本1本の質感や衣服のリアル感を感じさせる仕上がりとなっていたのだが、個人的にデスストはそれと同等、もしくはそれ以上のレベルでグラフィックが綺麗。性能の良いハードをベースに作られるゲームというのはこんなにも没入感の高いものを作る事ができるのか...と思わず感銘を受けた。

f:id:Gameslifeisff:20220201123221j:image
f:id:Gameslifeisff:20220201123241j:imageデスストは基本的に世界の空が快晴になる事がない。なのでスクショをすると全体的に明るさが暗めの写真ばかりになってしまうのだが、DC版で追加されたフォトモードを使った加工で世界を明るくする事ができる。その時でもこの美麗なグラフィックは映える事となる。道中で流れる川の水の透明感、至る所に生える芝生の青々しさ、ゴツゴツした岩場の堅くて荒そうな質感、雪山での白い雪のふわふわ感...自然風景がまるで現実にあるものと同じような感覚をゲームでも味わえる時代が来るとは...ゲームの進化ここに極まれりといった所だと感じた。

またPS5のゲーム特有の爆速ロードはデスストでも大きく実感する事となった。デスストではフラジャイルジャンプというファストトラベル要素があるのだが、地方をまたがった移動をした場合でも掛かるロード時間は5秒にも満たない。この記事を書く少し前にゲームさんぽというYouTubeチャンネルでデスストの動画を見たのだが、その時のデスストはオリジナルのPS4版でフラジャイルジャンプをした場面が映っていた。だが、その時掛かったロード時間はなんと数十秒以上、ロード時間を長いと感じさせない為にPS4時代でよくあったロード中のTips表示がされていたのを見て「移動の度にこんなロードを待つ事になったらストレスだろうな...」と感じる事となった。それぐらいまでにデスストDC版のロード時間の短さは圧倒的なレベルなのだ。

また3Dヘッドセットでの3Dオーディオにも対応、デスストはカメラを動かす場面がとても多くあり、ヘッドセットでの3Dオーディオを有効にした状態でプレイすると、カメラの向きに対するキャラクターの喋り声などがちゃんと四方八方から聞こえてくる。特にラストシーンでのある人物からの語りのシーンではその凄さを実感することができる。

そしてアダプティブトリガーにも対応、今回びっくりしたのは銃や投擲武器、ランチャー等の引き金を引く時の引き絞る重さの違いがそれぞれの武器であり、ハンドガンは1発1発を打つ時のR2ボタンの固さが一番固くて重さがあり、アサルトライフルは軽い力で押しただけでも2~3発はあっという間に出てくる。チャージ式武器は押している間のチャージが段階的に溜まる度にボタンが小刻みに揺れてチャージ中であることを実感させる。

また、サムは荷物を手で持つ事ができるのだが、荷物によって手で持った時の重量感の違いがトリガーを押す時の重さで感じる事が出来、荷物運びのリアリティさをさらに感じさせることが出来る。PS5の機能を実感させるだけでもPS4版とは別次元である事を感じさせる物となった。

 

デスストの基本的な遊び方

ゲームを語る時によく「お使いゲー」という言葉が出てくる。例えば物語を先に進めるためにあるアイテムが欲しいとなってそのアイテムを持っているであろう人物を尋ねた時に「そのアイテムを渡す前に〇〇に会って〇〇を持ってきて欲しい」や「自分はそれを持っていないが〇〇にいる〇〇なら持ってるかもしれない」といった言葉で今いる地域やフィールドからの移動を促して移動をさせる事で物語を進めるやり方を若干揶揄めいた言葉として「お使いゲー」と語られることがある。もちろんお使いゲーという名の通り本当にNPCからあるアイテムが欲しいと求められてアイテムを調達して渡すといったミッションやクエストがあったりもするのでそう言われる事もあるのだが、「お使いゲー」という言葉自体はネガティブな意味合いで使われる事が多く、プレイ時間を無駄に引き伸ばすための水増し要素という風にマイナスな言葉として捉えられることが多い。

だがデスストはそんなお使い要素に特化したある意味では究極のお使いゲーと言えるだろう。何故なら主人公のサム・ポーター・ブリッシズの職業が配達人であり、このゲームは配達によって人々の心と世界を繋ぐというコンセプトのゲームになっているのである。ある施設からの依頼を受けて別の施設へ荷物を届ける。その道中は決して平坦ばかりの楽な道ではなく、川や坂道、崖、ぬかるみ、時雨(タイムフォール/ときう)、猛吹雪といった地形や自然現象による障害だけでなく、荷物に執着してポーターの荷物を奪いに来るミュール(配達依存症)や殺しに掛かってくるテロリスト、あの世からやってくるBT*1など、外的脅威もあって一筋縄では行かない。

f:id:Gameslifeisff:20220201140948j:image
f:id:Gameslifeisff:20220201140942j:image
f:id:Gameslifeisff:20220201140945j:image依頼を受注したら荷物を積む、この時の積み方はとても重要で体の重心が偏り過ぎないバランスの取れた荷物の積み方をしなければならない。それが長距離移動の際にも大きく響くこととなる。荷物はサム自身が積み込むだけでなく、フローターやバイク、トラックといった乗り物を使って積み込むことも可能だ。中には1トンクラスの量の荷物を運ばなければならないこともあるのでそうなった時にトラック配送は必須となる。
f:id:Gameslifeisff:20220201140937j:image配送を受注したらいよいよ配送のスタート、この時のルート取りはとても大事で、地図を見て事前に行きやすそうなルートを模索するかとりあえず目標に向かって歩き始めてから現地でルート変更を行うかなどのプレイスタイルはユーザーに委ねられている。人それぞれでやり方が違うから一概に正解はないが、重要なのは荷物をどれだけ無事に綺麗に運べるかが重要*2

特にプレミアム配送といった難易度の高い配送では劣化率を数%に抑える事が必須条件なので荷物を丁重に扱うことは大事な事なのである。

f:id:Gameslifeisff:20220201142042j:image配送依頼にはそれぞれでの評価軸がある。荷物の安全性、サービスの良さ、荷物を運んだ数量、荷物を運ぶ速さ、そしてブリッジリンク(後述)、荷物の配送依頼を完了した時に受取人からいいねを貰う事が出来る。このいいねには依頼によってカテゴリーがあり、評価をあげることによってサムの配達人としてのランクを上げることが出来る。こうして評価を高めていくことでサム自身にも転びにくさの耐性が出来たり、スタミナがアップしたりといったメリットがある。これを延々と繰り返していく。まさに究極のお使いゲー、しかし僕はこれに見事にどっぷりとハマってしまい、見事配達依存症となった(笑)

 

現実とリンクさせるデスストの世界観

デスストは2019年に発売されたゲーム、しかしこのゲームはDC版が出るまでの間、とある事で時折話題になっていた。それがコロナ禍を予見していたかのような終末的世界観の現実とのリンクである。

舞台はデス・ストランディング(以下DS)という災厄によって人口が全人類の数%にまで減ってしまったアメリカ大陸。あの世とこの世が繋がってしまい、あの世からビーチを通じてBTがこの世に座礁してきたことによって人類は脅威に晒された。BTに取り込まれた人間は対消滅(ヴォイドアウト)を起こし、その辺一帯はクレーターになってしまう。

更にはカイラル雲から降り出す時雨が作物の成長過多、建物の劣化、生物の急激な老化を促すといった危険な自然現象の発生により既存のインフラ設備や交通網はほぼ壊滅、世界を覆っていたネットワーク通信網も遮断され、地上は危険極まりない世界となってしまった。人類は地下にシェルターを作ってそこに移り住み、永遠に引こもるようになってしまった。そんな中でも一部の人たちは危険な地表に出てシェルターに暮らす人々に物資を届けなければならない。それがポーターと呼ばれる重要な人物たちだ。

僅かに残った人類が生き延びるために配達人の需要が増え、ポーター達は黙々と己の仕事に従事して配達を続ける。これ以上の人口が増えることのない終末的な世界の中でブリジット・ストランド大統領はアメリカの再建をただひたむきに願い、ブリッジズという組織を立ち上げ、UCA(United Cities of America)という新たな合衆国を立ち上げようと奮起した。

主人公のサムはそんなブリジットに自らが果たす事の出来なかった使命とテロリストに捕らわれた義姉のアメリの事を託され、最初は渋々ながらもアメリ救出を第一として都市と都市を繋げることになったのだ...

この全人類の脅威となる要素が"ある日唐突に現れた事"とそれによって"人類が外に出られなくなってしまった事"、この2つがコロナ禍の現実の今とリンクしているとしてまるで予言であったかのように小島監督の築き上げた世界観にフィーチャーが当てられている。

小島監督の予言といえばMGS2愛国者達が主人公の雷電に通信で話していた「情報化社会の発展による緩やかな人類の衰退」という内容の通信がまさに今の現代で起きている事を予知していたと最近になってからネット上で話題になる事があり、今回はそれに少し似た様相になっているのだろう。この作品はプレイしていると微かに現実とリンクしている事が多くあって、まるで今起きている懸念を解決しなかった場合のAfterを見ているかのように錯覚する事がある。

例えばミュール(配達依存症)の誕生の経緯。これはDSが起きる前、世界の配送システムはネットワークによるインフラ整備が完全に整った事によって生身の人間による配達を必要とせず、自動配送ロボットやドローンが配達を担うようになった。しかしそれによって全世界の配達人は一気に職を失い様々な問題が発生した。そこでロボットやドローンによる配送は取りやめとなり、再び配達人が活躍することになった...だが、一度ロボットに職を奪われた事に対する強いヒステリーが「これは自分にしかできない配達だ」という強い思想を生み出し、それがいつしか歪んで配達ではなく、荷物自体に依存するようになってしまい、ポーターの荷物を奪いに襲う危険な存在となってしまった。

このミュール誕生の切っ掛けとなったロボットやドローンによる配送は今まさに現実でも導入されようとしているもので、ロボットによる生産工場の自動化が工場勤務の人達の職を奪ってしまったのと同じように配達人の職を奪う事になってしまうかもしれないというひとつの可能性としてフィクションとして見れない部分がある。

更に色々と考えさせられる部分も多くあるので少しだけピックアップしようと思う。

 

・ディメンス(分離破壊主義者)の思想とDS発生前のアメリカ合衆国

ディメンスは作中ではテロリストと呼ばれるミュールよりも危険な存在、荷物に依存しているミュールは荷物だけが目的なのでサムを見つけても気絶させるだけに留めている部分がある。しかしテロリストは道中でサムを見つけるとその生命を奪ってこようと銃火器を使って殺しにやってくる。ミュールよりも数が多いので見つかると厄介な上に命を落とす危険性もある恐ろしいヤツら。

しかしそんなディメンスも元は少し考え方が過激な右翼派ぐらいの人たちでしかなかったはずだ。ブリッジズが建国しようとしているUCAという新たな合衆国の誕生は世界に法律と規律というルールで人類を縛る枷になる。そう考えているディメンス達は対消滅テロを起こす事で繋がろうとしている人々の繋がりを分断している。DSによって国は崩壊し、政府もいなくなった作中のアメリカでは自分たちが生き残るために何者に縛られることもなく好き勝手自由に生きる事が出来る。

誰かとの繋がりを作ることはその誰かと自分を互いに干渉させる事になる。そこから生まれるものは決して良い事ばかりではない。だから繋がりを断つ、破壊をする。やってる事は危険極まりない彼らだが彼らの思想には共感できる部分が多々ある。

DSが起きる前のアメリカでは全人類がネットワークを通じて世界と繋がっていた。しかし繋がった事によって逆に無用な争いや綻びを生み出し、人種や風習、思想の違いによって個人間や企業間、政府間での争いが絶えずそれはそれは酷い世界だったという。そんな最中でDSは起き、人類は分断された。「無用な繋がりがあるからこそ人は互いに傷つけあってしまう」ディメンスとなった人達ももしかしたらDSが起きる前の"繋がっているのにバラバラで争いが絶えないネットワークの世界"に嫌気がさした人達の集まりとも言えるのかもしれない。

現実でもまたネットワークの構築から発展、SNSの進化などによって人々は簡単に誰かとの繋がりを持つ事ができるようになった。しかしそれと同時に思想の違う者同士がひとつのネットワークで繋がった事によって争いや論争も起きるようになり、誰かが誰かにいがみ合う世の中になってしまった。特にマイナスな感情に作用されやすいSNSというものは無用な争いを生み出し、人々の心を疲弊させていく。争いが絶えないネットワーク上の混沌とした世界に満ちている現実世界の中でデスストのDSのように人類の大量消滅クラスの厄災が起きたらリアルでもディメンスの様な思想を持つ集団が現れるかもしれない。そうでなくても今の時点で既にひとつの思想に固執した人が集団で集まって危険な事をしている人達は数多に存在している。そんな彼らをひとつにまとめるというのは決して一筋縄では行かず、難しいものなのである*3

 

・UCAに加盟しないブレッパーズの考え

これはディメンスの思想と似た事になるが、作中メインで配送する事になるアメリカ中部には多くのブレッパーズ達が存在している。ここでのブレッパーズとはノットシティの様なブリッジズが運営する都市には住まず、各個人でシェルターを持ってそこに1人、あるいは家族の少人数で暮らす人達のことを指す。彼等は様々な事情や考えがあってシェルターに暮らしている。厳しい立地環境の中で暮らす人達もいるが、彼等は基本必要以上の繋がりを求めておらず、中には都市や合衆国とは距離を置いている、もしくは繋がりを断って孤立する事、孤独である事を敢えて望んでいる人たちもいる

なので初めての配送で最初に会った時はいきなりUCAには加盟してくれず、カイラル通信だけは繋げるがUCAには加盟しないという人もいるし、そもそもカイラル通信ですら繋げたくない人もいたりする。何故そういう考えに至るのか...大抵はDSが起きた当時の合衆国政府の対応の酷さによる国や政府自体への不信感がUCA加盟を拒む原因となっている人が多い。人類の消滅という究極的な脅威が起きた時に人々を先導しなければならない立場の人達がまともな対応すら出来ず、それが国や政府に対する不信感に繋がっている。

これもまたコロナ禍に於ける対応の酷さが国や都道府県、政府に対する不信感を募らせている日本や世界の状況と似たような事になっている。未知の脅威に晒された時に人々をまとめ上げて先導するべき立場にある政府はその対応の仕方によって人々からの信頼を得るか、不信感に繋がるかのどっちかに転がってしまう。オマケにその対応の仕方に決まった正解は無く、何をしても批判をされる事になる立場の人達だから余計にキツイ事になる。

デスストの中での合衆国政府がDSが起きた時にどんな対応をしたのか詳しく知る事は出来ないが、「国は何もしてくれなかった」と言うブレッパーの言葉から見るに相当無策でめちゃくちゃなら対応をした事は間違いないだろう。そういうところでも思想の違いというものは如実に現れており、改めてそれを一つにまとめあげることの難しさを実感する事になった。

しかしサムの頑張りによってはそんなブレッパーズ達からの信頼をだんだん得られるようになって、最終的にはUCAへの加盟をしてくれる。中には何回も配送をしないとUCAに加盟してくれないブレッパーもいたが、信頼を得てUCAに加盟するという言葉を聞いた時にはやっとか...!嬉しい...!と喜びを噛み締める事もあった。

 

・ただ繋がる事だけが決して良い事ではない

これは小島監督が出演した番組のゲームゲノムやSWITCHインタビューでも語られていた事だが、繋がるという事は同時に責任を持たなければならない事になる。

それを否応にも実感することになるとあるキャラクターがいる。それがアメリカ中部で2つ目に訪れ事になるブレッパーのエルダーというおじいちゃんである。彼は高齢の持病持ちの人で常に薬を飲む事で生き長らえている人である。彼には定期的に薬が必要で、エルダー宛の指名なし配送の中には薬を届けるという依頼も存在する。

このゲームの第一の目的はカイラル通信を繋いで世界中の都市を一つにまとめて繋げる事。中部地方での最優先事項の目的はノットシティから次のノットシティへの距離が離れ過ぎている為、都市と都市の間に存在するブレッパーズのシェルターとカイラル通信を繋いで小規模の通信網を広げる事でそこを中継地点とし、次のノットシティへとQpid*4を繋ぐ事、ブレッパーズへのカイラル通信の繋がりはノットシティへの繋がりになる。ある意味では手段として捉えることもできる。しかしゲーム的にはそうかもしれないが現実問題として考えた時、ただ繋がるだけでは決してダメなのである。

大抵のブレッパーズはカイラル通信を繋げてからしばらくの間そこを訪れる事が無く放置されていてもいつかまた来た時には出迎えてくれる。しかしエルダーだけは違う。カイラル通信を繋げられた事にプレイヤーは安心して次の施設に向かっていく中でエルダーの事を放置してしまうと...

 

エルダーは亡くなってしまう

 

最初の頃は「おーいサム!」と元気に出迎えてくれていたあのエルダーおじいちゃんの元に久しぶりに訪れてみると何故かエルダーからの出迎えはなく、荷物を納品しても本人は出てこず、自動音声によるアナウンスがあるだけ、そのまま納品完了のリザルト画面に入り、何かおかしいな...と思ったのも束の間、そこにはBTと化したエルダーと思われるホログラムが薄っすらと浮かび上がってただ静かにそこに佇んでいた...

その後にエルダーからの遺書のメールがサムの元にタイマー機能を使って届けられる事になる。エルダーが亡くなった原因は持続的に飲んでいた抗生物質の薬が枯渇して寿命を維持する事が出来なくなった事が原因となる。エルダー死亡の前触れとしてエルダーへの定期的な配送を放置していると出迎えるエルダーが点滴姿になっている事がある。思えばここでおかしいと思うべきだったところではある。それを更に放置するとエルダーは亡くなってしまう。

この点について小島監督は監督からユーザーへのメッセージが込められたもので、「ただ繋がるだけではダメで、繋がった後のアクションが大事なんだ」という意味でエルダーの死亡タイマーが設けられた事になっている。デスストの中でカイラル通信という形で人との繋がりを作るのはある意味で言えば「手段」であり、「ゲーム的」だとも言える。けれどこれを現実で当てはめて考えた場合、それは決して放置してはならない大事な「縁」とも言えるのだ。

故にエルダーをうっかり死亡させてしまった僕は激しく後悔した、その後に届くエンジニアからのメールには「ブリッジズには亡くなった彼の事を弔うという責任がある」と定期的に彼の事を気にかけなかったサムの事を暗に批判している

しかしこれについてはユーザーの間でも賛否両論で、ただただ面倒臭いと切り捨てるユーザーも少なくはなかった。身近な所で言うとみんなが誰しも触れているSNSなんかは、例えばとあるひとつの出来事をきっかけにフォロー、フォロワーという繋がりを作る事が多い。しかしその繋がりを作った後で、定期的にリプライを送って会話をする、お互いにいいねをして干渉をする、等のアクションをとって繋がりを意味の無い繋がりにしないように維持するのは相当難しく、一人の人間が定期的にアクションを取れる人数には限界がある。

だからただ繋がっているだけで何の親しみの込めた発展もない形骸化した繋がりになってしまってる人はみんな絶対に1人はいる事は確かだろう。それに繋がったからと言ってそこまで深く干渉して欲しくないという出会った当初のブレッパーの様な考えを持つ人も多くいる。だからその人と仲良くしたいと思ったとしても信頼を積み上げて仲良くするのは相当難しいし気が遠くなる。こういうSNSの場では深い繋がりを最初から求めてない人もいたりするのでエルダーの要素については賛否両論となってしまうのも仕方がないだろう。

とはいえ、僕は彼の寿命を維持させたかった。それだけは深い後悔として今も心に残っている。

 

間接的に世界と繋がっているオンライン要素

デスストは基本的に1人プレイ専用のゲームでオンラインでリアルタイムに競ったり協力プレイをするといった要素はない。しかしデスストの世界は完全に1人で攻略するしかないという訳では無い。

オンラインに繋げて他のデスストプレイヤーとの間接的な繋がりによって建設物や車両、荷物を共有する「ソーシャル・ストランド・システム」というオンライン要素がデスストには備わっていて、それによってプレイヤーは他者との間接的な繋がりを維持する事が出来る。これによって起こる最大のメリットは「他プレイヤーが作った建設物が共有される事

例えばカイラル通信が繋がる前のエリアでは建設物は何も無く、厳しい道のりを1人で進まなくてはならない。しかしその辺地域のエリアに対応した施設がカイラル通信で繋がるとそのエリアを攻略していた他プレイヤーとの情報共有がされることになる。それによって川幅が広くてハシゴでも使わなければ渡るのも厳しかった所に橋ができていたり、危険なミュールやテロリスト、BTが出没する座礁地帯の周辺にポストが置かれて荷物の預りや共有をする事ができたりと様々なメリットや恩恵を受けられる事が多い。

看板によってこの先の障害情報を知る事ができたり、放置されている車両に乗る事で早く移動出来る手段を得たりと、他プレイヤーとのプレイデータの情報共有は自身のプレイにも大きく有利な展開となる。それによって快適な配送を維持する事が出来て、ユーザーの利益に繋がる。これが間接的なデスストのオンラインシステムであり、これまでのゲームにはなかった新しいオンライン要素としてこれも話題に上がっている。

またこれらの建設物等には「いいね」で評価を与える事ができるようになっており、送ったいいねの情報は実際に相手プレイヤーに通知されて届く事になる。ボタンによる手動のいいねだけでなく、建設物を利用する事、看板の効果を受けること、車両に乗ること、他プレイヤーの落とした荷物を届ける事、国道を使う事、あらゆるアクションが誰かの遺物の干渉を受けており、またいいねによる評価はポジティブなものとして自身の気持ちを前向きに高めてくれる。人からもらったいいねはブリッジリンクという評価軸でのパラメーターを上げることが出来る

正直な話、誰かとの強い干渉をする事になる従来のゲームのオンラインプレイやオンライン要素というものにはネットの向こうにいる人間を直接相手しなければならないという事で嫌だなと思い、壁を作ってやらないようにしていた部分がある。ましてや友達でもなんでもない赤の他人との対戦や協力プレイというものでは少なくともトラブルに発展するケースも少なくはない。顔も知らないネットの向こうにはどんな人間がプレイしているのかも分からない。互いに強い干渉を必要とするオンラインプレイというものには昔からハードルが高く感じていた。

しかし直接的ではなく、間接的な繋がりによって緩やかな干渉をする事が出来るデスストの様なオンライン要素は進んで繋がりを求めたくなる。見知らぬ人からのいいねを貰うことで嬉しい気持ちになる、嬉しい気持ちになると他の人にいいねを上げたくなる。これは良い!と思った建設物等にいいねを送るとそのいいねが相手の元に届く、その評価を受けたプレイヤーは嬉しい気持ちになって違う誰かにいいねを送りたくなる...と、完全にポジティブないいねがユーザーの相互作用を働かせている。

これは今後のゲームにも取り入れて欲しい新たなオンライン要素として僕はこのゲームを支持したい。

 

DC版になって新しく追加された事

DC版ではオリジナル版と比べて新たに追加された要素がとても多くなっている。

サムに自動的について行って荷物運びのサポートをしてくれる自動追従ロボットや建設装置に新たに追加されたジャンプ台や荷物カタパルトの存在、これまで戦ったボス敵と再戦する事ができるようになる悪夢の要素や、追加された武器を思う存分練習する事ができる&スコアを競うことができる訓練場、レースゲーム、様々なものがあるがその中でも僕がこれは凄い...と思ったのは「マニューバユニット」

f:id:Gameslifeisff:20220201133120j:imageマニューバユニットはサムが転びそうになった時のよろめき具合を修正して転びにくくさせるバックパック装置なのだが、一見すると使いにくそうであまりメリットがないな...と思った。しかしLv3になるとその性能は圧倒的に大きく変わる。Lv3ではなんと「どんなに高いところから飛んでもノーダメージで済む」というチートめいた壊れっぷりになっているのだ。

その名の通り本当にどんな高いところから飛んでもマニューバユニットの力によってノーダメージで済む上に、荷物に対するダメージもない。これによって徒歩での移動時でもスピードスケルトンと組み合わせて少し高いところから飛んだだけでも圧倒的な長距離移動をする事ができる。

f:id:Gameslifeisff:20220201133738j:image例えばこんな高いところからも...
f:id:Gameslifeisff:20220201133800j:imageジャーンプ!
f:id:Gameslifeisff:20220201133757j:imageそのまま落ちて...
f:id:Gameslifeisff:20220201133804j:image着地!

マニューバユニットはバッテリーさえあれば有効化されて高いところからの移動を楽にさせてくれる。ただし着地先が不安定な急坂だと着地した瞬間滑り落ちるし、着地した少し先に崖などがあってよろめいて落ちた場合はそのままサムのダメージに繋がってしまう。ただしジャンプの動作を取っていればマニューバユニットは起動するのであまりデメリットにはならない。寧ろメリットしかないのが凄いところで、少なくともこれがあれば崖や高いところから降りる為のロープ用パイルはほぼ要らなくなってしまう。あんまり使いすぎると配送がつまらなくなってしまいそうだが、少なくとも僕はもうマニューバユニットがないと生きていけないレベルでどっぷりマニューバユニットを使い込んでしまっている(笑)

デスストDC版は様々な追加要素があるが特にこのマニューバユニットは本当に凄かった。オリジナルのPS4版以上に快適な配送をする事が出来るのでデスストをやった事のない人はDC版のデスストをオススメする。春にはデスストDCのPC版が出るとの事なのでまだPS5が手に入れられてない人は春まで待って、手持ちのPCでやってみるのも良いかもしれない。最初は不便な事が多くて不満も出やすいかもしれないが、配送を完了した時の達成感やそこから出るドーパミンの量は半端ないので僕は是非ともオススメしたい。

 

最後に

デスストのストーリーはとても考えさせられるものとなっており、アメリを救うという目的の先に見える展開はとても壮大なことになっているので是非その手でプレイして見てほしい。ハマればあなたはサムという人間に対する深い思い入れができているかもしれない...!

そして見事配達依存症となった僕は現在難易度をHARDに上げてプレミアム配送のLegend of Legends評価を獲るゴールドトロフィーとプラチナトロフィーを目指している。最後の最後まで読んでくださりありがとうございました。

 

皆様も今後も良きゲームをお楽しみください!

 

 

*1:Beached Thing(s)(=座礁物、座礁体)の略称。時雨が降る座礁地帯となったエリアに出没。

*2:速達配送の場合は速さも重要視されるが

*3:現に物語序盤のサムもカイラル通信を使って世界を繋げてくれと頼み込むダイハードマンに対して「世界がネットワークで覆われても人類は争いを止めなかった。世界を無理矢理繋げてもまた綻びと争いが起きるだけだ!」と世界を繋げて合衆国を再建する事に猛反対していた。悪い意味で変わらなかった人類に対する失望はサムだけでなく多くの人が抱いた事なのかもしれない

*4:カイラル通信を繋ぐための装置